「 "PRN" ポジションのRDで、現在、複数の病院で働いています。」
「え、複数の病院掛け持ち勤務って可能なんですか?」
「就業規則等、ひっかからないんですか?」
「ていうか、PRN ポジションってなに??」
という反応をよく頂きます。
そんな訳で、本記事では ”アメリカ ヘルスケアワーカー全般 (下記の内容はRDに限らず一般的なので)あるある雇用形態” について触れてみたいと思います。
計4パターン (1. フルタイム, 2. パートタイム、3. PRN/Per diem 4. トラベル)
1,2 のフルタイム・パートタイムは、日本とほぼ同じだと思うのですが、3. PRN/Per diem と 4. トラベル は馴染みがない方も多いかもしれません(アメリカ人でもヘルスケアワーカーでない場合、なにそれ?と知らない方が結構いらっしゃいます。)
目次
1. Full-time (フルタイム)
日本の正社員とほぼ同等(*フルタイムでも年棒/サラリーではなく、時間給な場合もありですがここでは割愛)。
会社・施設によって、時間の定義に多少の差は出てきますが「1週間当たりの所定労働時間」は基本、週40時間。(透析クリニックで働く友人は、週4日: 36時間勤務でフルタイムだそうな。)
フルタイムの一番のメリットといえばやっぱりベネフィット(福利厚生)ですよね。
一般的な 法的福利といえば、
雇用主が負担してくれる以下のような税金や保険料↓。
- 「Social Security Tax 社会保障税 」
- 「Medicare Tax/メディケア税 」 *メディケア: 65歳未満の障害者や特定の疾病のある人に提供される、アメリカのの健康保険制度。10年 納税すると、65歳になったとき、メディケア・パートA(入院保険)に無料で加入できる。
- 「Unemployment insurance失業保険」
- 「Workers' compensation 労災保険」
法定外福利といえば (雇用主の予算やポリシーによりますが)
- Leave (休暇): PTO/Paid Time Off (有給休暇)、Sick Leave (病気休暇)、Paid Holiday (祝日)、Bereavement Leave (忌引休暇)
- Group Health Insurance 団体健康保険: 国民皆保険がない+保険費が激高すぎなアメリカなので、勤務先が提供&ある程度負担してくれる保険に入れるのはすごく強いインセンティブではないかと。日本の保険&ヘルスケア費甘やかされて育った私的には、それでも高っっと感じますが..プランも色々あり、眼科保険や歯科保険に入る入らない、HMO vs PPO等 アメリカの健康保険は掘り下げようとすると泥沼、出口のない迷路につっこむこととなるのでこの辺で..
- 確定拠出型の企業年金: 401K (一般的な退職金プラン)
などが一般的。
負う責任はもちろんフルタイムが一番大きいし、スケジュールの柔軟性は他の形態と比べて低いですが、
やっぱり↑の福利厚生、安定した収入、仕事内容への深いコミットメントが可能なので魅力ですよね。
ちなみに、アメリカでボーナス支給は一般的ではなく(少なくともヘルスケアワーカーでもらってる人にはまだ会ったことがありません)、もらえるとしたら、企業勤めで良い業績をあげた方がインセンティブとして稀にもらうくらい? な印象です。
2. Part-time (パートタイム)
”パートタイム” の定義・勤務時間は、雇用主が決められるので、勤務先によって16時間や20時間、30時間だったり様々。そしてその勤務時間数、 雇用先のポリシー・懐具合によって、パートタイムに与えられる福利厚生(↑) の有無・程度も変わってきます。
週25時間以上勤務の場合は、福利厚生をある程度受けられるところが多い様子。
団体健康保険への加入資格はもらえなかったとしても、もし年間1000時間以上(週20時間 x > 1年以上) 働いていたら、401K(企業年金)プランには加入できる所がほとんどのようです。
他に入れる健康保険のあてがあるなら(家族・配偶者の健康保険に入れる等)、パートタイムポジションもありですよね。もうちょっと収入が欲しい場合は、パートタイム+下記で紹介するPRN 勤務とかも組み合わせて収入up↑もできます。とりあえず、ある程度のスケジュール柔軟性を維持しながら、毎週、一定の勤務時間と収入を確保できるのは魅力だと思います。
3. PRN or Per-Diem (ピーアールエヌ or パーディアム)
PRN 、Per-Diem 共にラテン語で
- PRN = "Pro re nata"(プロ・レ・ナータ) = as needed/ when necessary =必要に応じて
- Per diem (パー・ディアム) = by the day/for each day = 日当、日毎の
という意味で、双方ほぼ同義的に使われています。私の住むエリアでは PRN がよく使われますが、New Yorkから越してきた上司は、"New Yorkでは Per diemの呼び方が一般的だった"と言っていました。
PRNポジションは、まさに、そのまま「必要に応じて勤務」する形態=不定期パートタイム・バイト的な。
フルタイム・パートタイムがお休みの時や、週末・ホリデー、仕事量が多すぎてマンパワー足りない...という際に重宝されるのがPRN スタッフ。
採用プロセスは、フルタイムとそこまで大差はない模様(面接、バックグラウンドチェック、薬物検査、施設によっては推薦書etc.. 面接の回数が多少異なるかもですが)。
PRNには基本、福利厚生が発生しないので、雇用主にとっては、必要に応じてヘルプに来てくれる+福利厚生でお金がかからないPRNは都合がいい訳です(その分、一般的に時給は割高ですが)。
フルタイムの人も、PRN がいると、自分が休みたい時に、他のフルタイムへのしわ寄せをあまり心配せずバケーションを楽しめます。
PRN スタッフ的には、福利厚生がない点・最低勤務時間数の保証がない・患者さんの日々のフォローアップができない点等、短所に挙げられますが、
もし、家族や伴侶の保険に入ることができる場合、PRN のスケジュールの柔軟性はやはり最大の長所ではないでしょうか。
私は子どもがいるので、平日に歯医者や眼科に連れて行きたい・学校行事がある・半日でお迎えの日、学校休日だけど、公的休日ではなくてフルタイムだと出勤、な日もあるのと、
あと、日本に一時帰国したい年があるので(数年に一度は長期で帰りたい..)
PRNのスケジュールの柔軟性は、かなり有難いです(大体、一ヶ月前くらいにシフト組みをするので、前もって、都合の悪い日/週・良い日(毎週火・木曜日以外とか)を伝えてスケジューリングしてもらいます。
あと、同時に複数の施設で勤務することも可能なので、フルタイムでコミットメントする前に自分の好きな分野はどこか、PRN として色々な病院・施設・会社で働くことによって自分に合う合わない・好み等を推し量ることもできます。
私は現在、急性期(心臓疾患専門の病院&総合病院)と回復期(リハビリテーション病院2件)でPRN Clinical dietitianとして働いていますが、病院によって使うEMR、スクリーニング・カルテの書き方、RDの働き方、栄養処方の内容にもある程度違いがあるので、そういった点を学べるのも、私にとっては魅力的な点です。今の所。
*複数PRNな私のスケジュールは毎週まちまちですが、大体週4-6日ほど働いています(複数の施設で勤務する場合は、スケジューリングを気をつけないと7-12連日勤務なんてことにもなり兼ねないので注意が必要です)
4. Travel (トラベル)
数週間〜数ヶ月に渡っての一時的な勤務で、スタッフが足りない同州・他州の施設へ赴きます。
移動費・滞在費は出るので(必要最低限の家具もついてて、ペットを飼っている人にはペットフレンドリーな滞在先を用意してくれるとこも)、数ヶ月、違う街で住んで仕事がしてみたい・旅行好きな人にはいいかもですね。そのまま、そこでフルタイムに採用されて住み着く人も珍しくないとか。
私も、環境が許すならカリフォルニアやハワイ、他州でトラベルRDしてみたかったです。
給料はもちろん内容によってピンキリだと思いますが、総じて他のポジションより高めです(期間限定なので)。今、チラッと求人見てみたら、時間給で36-125ドルとか1週間で2600-2750ドル等でてました (Travel RD で)。
今度、赤裸々お給料事情とかに触れてみるのもいいかもですね。
最後に本記事で触れた 各雇用形態の 特徴を簡単にまとめた表を載せておきます。
*↑ は "一施設当たり" なので、フルタイム+週末PRNをしている人や、複数パートタイムまたは複数の勤務先で PRNをしている人は、週に40時間働いている人もいらっしゃいます。