本サイトでは、アメリカの登録栄養士(Registered Dietitian Nutritionist: 略してDietitian, RDまたはRDN)
について紹介していきますが、まずはじめに
よく混同されやすい Dietitian (ダイエティシャン)と Nutritionist (ニュートリショニスト)
2つの紛らわしいタイトルについて取り上げたいと思います。
というのも、
両方とも栄養・食を扱う職業なのでオーバーラップする点がもちろん多いのですが、
資格取得までの道のり・必要条件が異なるので
違いについて理解しておかないと、情報検索の際に両方の内容が入り混じってややこしいものが更にややこしく.. 簡単に情報の迷子になってしまいます💦
目次
アメリカにおいて "Nutritionist" の定義は曖昧
まず、クリアーにしておきたいのは..
Dietitian は Registered Dietitian (登録栄養士)のみを指すのに対し、
Nutritionistは民間の資格から公的な資格保有者、また無資格だけど栄養関係の仕事をしてる人、皆ごっちゃにひっくるめて総称的に世間で使われてしまっている感じです(栄養を生業とする人は皆、Nutritionist的な)。なので、ちゃんと栄養を専門的に学びトレーニングを受けたNutritionistもいれば、州によっては規制がない為、下手したら誰でもかれでも、例えばYoutubeで趣味程度に栄養系のチャンネルを見た独学者でも「私はNutritionist」と言ってしまえます..
なので、もしあなたがアメリカのフィットネスクラブ等で、"Nutritionist"に紹介されたとして、その方が
民間の資格(通信講座等のみで一年未満とかでとれるもの)を持っているのか、
公的な資格 (Certified Nutrition Specialistという学位と実習が必要な資格)を持っているのか、はたまた
極端な話、独学で "Nutritionist"を名乗っているのか、確認しないと分からないわけです。
そういった背景もあり、アメリカの栄養士会的存在であるAcademy of Nutrition and Dietetics (AND) は、以下の通り提言しています。
「Dietitianは全員、Nutritionistであるが、Nutritionistが皆、Dietitianであるとは限らない」= つまり、DietitianはDietitianであると同時にNutritionistでもあるが、Nutritionistは、Dietitianの資格を持たない限りDietitianを名乗ることはできないと..
↑このコンセプトを、より明白に浸透させるべく(Dietitianの資格を持たないNutritionistとの区別化:Dietitanのタイトル保護+世間への注意喚起も兼ねて→ 例えば自称 Nutritionistによるアドバイスを鵜呑みにして健康被害を受ける方もいる為)、
ANDは2013年に、Registered Dietitian (RD)という肩書にNutritionistを足して
"Registered Dietitian Nutritionist (略してRDN)" という新しい肩書をオフィシャルに提案しました。一応、ANDは RDNの方の使用を推してる様ですが、長年、ダイエティシャン=RDで通ってきたので、現在、DietitianはRD または RDN、どちらでも好きな方の略称を使うことができます。
何ができて何ができないのか..??
上記の通り、”Nutritionist" と一言にいっても無資格者から有資格者まで様々なので、
”Scope of Practice =行って良い職務の範囲”は、Nutritionistが有資格者であるか、またどの資格を持っているのかによっても異なります。
が、DietitianとNutritionistでオーバーラップする仕事内容といえば、一般的に挙げられるのは
"健康な人"へのアドバイス(より健康的なライフスタイルを提案するようなヘルスコーチや、食育、カロリー計算、献立・ミールプランetc..)ではないでしょうか。
"健康な人"というのがキーワードですね。
一方、Dietitianに出来て、Nutritionistにできないこと.. それは
「病院等の臨床現場(特に急性期ケア*)で仕事ができるか否か」
だと思います。
*Certified Nutritionist Specialistという資格をもつNutritionistの場合は、州によっては外来クリニック等で慢性疾患の方に栄養指導をできる場合もありますが、急性期ケア含む 病院での入院患者さんに対し、”栄養診断 (Nutrition Diagnosis)" を下し、傷病者に"栄養療法・介入 (Nutrition Intervention)”を提供できることが法的に認められているのはDietitianのみとなります。
(経腸・静脈栄養も、DietitianにできてNutritionistにできない業務内容の一例として挙げられます。)
資格取得方法の違い
Dietitianになるためには、定められた学校で学士または修士(2024年以降は修士必須)を修め、1200時間以上の実習を終えた後、いわゆる国家試験に合格することが最低限必要となります。
Nutritionistは、本記事で触れてきた通り、独学の無資格者から民間または公的な資格者まで含む 曖昧なちゃんぽんワードなので 個人、各団体によって様々です(まさにピンきり)。今後、CNS:Certified Nutrition Specialistなどの有資格者が、無資格者との区別化を図って主張されていくことで変わっていくかもしれませんが、世間の認識に反映されるにはもうしばらくかかりそうですね。
まとめ
DietitianもNutritionistも、食・栄養・ライフスタイルの提案を通して人々の健康増進に貢献する職業であるが、Dietitianとして働くには資格が必須である一方、Nutritionistとして働くのに資格は必須ではない。
Nutritionistというタイトルは、規制の甘さから無資格者によって乱用されることがある点を留意しておかねばならない(州によって規制が異なる)。
DietitianもNutritionistも、健常者に対して健康増進を推進する事はできるが、病院で傷病者に対して医学的栄養診断を行い栄養療法を提供することができるのは Dietitianのみである。